10/06/2013

Sweet Watch Illinois

あっという間に9月も終わり、10月になってしまいました。半沢直樹もあまちゃんも終わってしまいましたが、どちらもドハマりしていたワタクシはすっかりさびしい毎日を過ごしています。さて、今年もあと3か月。毎年のことですが、時間の経過の速さについていけません。ここ数年やたらと風邪をひくようになってしまい、しょっちゅう具合が悪くなっていますが、正直そんな自分の免疫力の低下に辟易しています。どっちつかずの気候が続くこの時期は注意しないとすぐやらかすことになりそうなので、気を引き締めたいと思います。

ところで、前回ここでネタにした「マッピン&ウェッブ」の時計を店頭でご覧になる方が何人かいらしたのですが、ふと「これと似たような雰囲気の角型のイリノイがあったような。。。」と思い出しました。そこで、当店のバックヤードにある巨大金庫の中を一日がかりで捜索してみるとやっぱり見つかりました。それがこのレクタングル。大体1920年代後半のものです。

この"ILLINOIS"という時計メーカー。全然聞き覚えがないなんて方もいるかも知れませんが、由緒あるアメリカのメーカーでして、鉄道時計の世界では超メジャーな名品も多数あるので、懐中時計がお好きな方々にとってはお馴染みだったりします。そんなこの「イリノイ」というブランドですが、腕時計の数はそれほど多くありません。というのも腕時計がポピュラーになってきて、ある意味で全盛期を迎える1940年代にはとっくに消滅してしまっています。

いわば星くず系時計メーカーなのですが、ワタクシの記憶が正しければ、あのハミルトンに吸収され、確か1933年にはブランド名も完全になくなってしまったはずです。ハミルトンがのちにベンチュラなどに搭載されることになる「エレクトリック500」といった革新的なムーヴメントの開発まで行うようになり、米国で最大の時計ブランドとしての地位を確立した背景にはイリノイと合併したことで高い技術力を得ることが出来たという経緯がそもそも大きく関係しているなんてことも言われたりします。まぁ、その辺りの詳しい部分は実際にはよく分かりませんけど、とっくの昔になくなっているなんていうブランドほど魅力があるような気がします。いずれにしても実にロマンチックじゃないでしょうか。ちなみに前出の「星くず系時計メーカー」とはすでに存在していないメーカーを夜空に輝く名もない無数の星に例え、ワタクシが勝手にそう命名しました。


この写真のイリノイはホワイトゴールド張りのケースにラウンド型の手巻きムーヴメントを搭載したモノでして、外観上の最大の特徴は通常6時の位置にレイアウトされるスモールセコンドが9時の位置にあることでしょうか。これはポケットウォッチの時代からの名残だったりします。別に機能上どうってことはありませんが、デザイン的に他ではあまり見ない仕様なので、ちょっと魅力的じゃないでしょうか。内部に目を向けると結構きれいな仕上げが施されていて、見た目もなかなかのもんです。このムーヴメントはブリッジ全体がストライプ仕上げになっているので、ちょっとスイス製っぽい雰囲気ではありますが、どことなく趣が異なります。他にも驚くほど複雑な模様が描かれているムーヴメントもあって、イリノイの時計は中身もユニークなのです。

もうずいぶんと前になりますが、当店ではこのイリノイを積極的に取り扱っていた時期がありました。とても興味深い時計なのですが、知名度、人気はあまりありません。現存数が少ないことや大変個性的なところに注目して、一時期は結構な数を収集していました。ところが、結局のところ世間的に人気がありませんので、それほど売れませんでした。でも、入手しづらいし、まともなコンディションのモノはどんどんなくなっていきますから、
販売するのはもったいないと思うようになり、それに「どうせ売れないだろうし。。。」とその後はそれらの一部を保存することにしました。そして、そのひとつがこの角型だったりするワケです。

一般的な評価からはちょっと外れるけど、魅力的なイイ感じの古時計を紹介したいとは思いつつ、誰にも分かってもらえないようなモノばかり並べていても商売になりません。元々売れ線の時計ばかり扱う店ではありませんが、適度に人気あるモデルも扱いつつ、ちょっとマイナーでもシブい良品も並んでいる。そんなバランスを取りつつ、当店なりの絶妙なサジ加減でイイ雰囲気の時計を集めるように心がけているつもりです。とはいえ、なかなか難しいもんですねぇ。多少でもニーズがあるようなら、またイリノイの時計を仕入れてみようかなんて思ったりする今日この頃ですが、なんせ結構古いモノなので、オリジナル性はあまり期待出来ないかも知れませんねぇ。今後はちょっと意識してみるかも知れません。。。





イリノイといえば、もちろんアメリカの州のひとつですよねぇ。そして、イリノイ州といえば、最大の都市シカゴ。以前はシカゴへも仕入れの旅で行ったりしたものです。最後にシカゴにちなんだ曲をおひとついかがでしょうか。伝説のミュージシャン、ロバート・ジョンソンがオリジナル。映画「ブルースブラザーズ」の後半のコンサートのシーンから"Sweet Home Chicago"をどうぞ。ミュージカル的手法で音楽と笑いが完璧に融合した名作だと思います。ダン・エイクロイド扮するエルウッドの動きがたまりませんねぇ。「ゴールデン洋画劇場」でせんだみつおと小野ヤスシの吹き替え版を観たのが最初ですが、いまだにワタクシ的オールタイムベストムービーのひとつです。。。




Horol International
twitter
facebook
mixi page